Hallelujah!
シリアスにみせかけた、ギャグです。
戦いは終わった。
全ての元凶とも言えるフォールンを倒した後、オプティマスは戦略的撤退を行ったメガトロンを追いかけ、そして地球に帰ってきた。満身創痍なメガトロンとその部下を引き連れて。
何があったのか、皆詳しくは知らない。が、簡単に想像出来た。それが正しいのか間違っているのかは分からない。訊ねるとオプティマスは笑顔ではぐらかし、メガトロンは怒り出すからだ。その時メガトロンと共にいた二人の部下は賢明にも口を堅く閉ざしている。
あの時、オプティマスは切れていた。マトリクスやグレートマシンを巡る戦いの前から、少しずつその傾向は高まっていたが、どうやらあの時臨界点を突破してしまったらしいとはラチェットの言葉だ。
戦いが終わった数日後、やはり許せんと呟き地球を飛び出して行ったオプティマスを見た者は、皆一様に彼の勝利を確信したという。中には思わず神に祈った者もいた。修羅か羅刹かと日本人隊員達が語り合い、あれは般若だという結論が出た。般若が女性の鬼面であることは承知の上での結論だ。
終わりの見えない争いにうんざりしていたのか、それとも誰もオプティマスに逆らえなかったのか。不平不満や禍根は皆、それこそトランスフォーマーも人類もたっぷり持っていたがとりあえず手を取り合うこととなった。
人類にとって自分達を害した敵であるディセプティコンであるが、彼らは意外な利益を齎した。つまり強大な敵に立ち向かう為に世界を一つにした事で、多国籍軍ネストが良い例だ。
それに今の人類の力では本格的にぶつかりあった場合、勝てないと頭の片隅で皆理解していたのだろう。あの勝利は、オートボットの協力とディセプティコンの不調によって齎されたもので、決して人類のみで成し遂げられたものではないのだ。
彼らトランスフォーマーと巡り合ったことによって、世界は争いを止め、そして次いで外宇宙へと目を向けることとなった。彼らの知識と技術を学べばそれは夢物語ではない。地球上で争っている場合ではないのだ。宇宙開発。それは人類の夢だ。外宇宙は危険に溢れているが、今は頼もしい友人達がいる。彼らは力と知識に溢れており、素晴らしい守護神となるだろう。
オートボットはそもそも戦いを終わらせる為に戦っていたので問題は無かった。怒りや恨みはあるが、それを許せなければ戦いは何時までも終わらないと知っている。
ディセプティコンはメガトロンに忠実なものは彼が終戦と言えば納得した。そうでない者もそれぞれの思惑を胸に従った。一部の過激派はどうやら徹底抗戦の構えを見せているらしいが、それらを潰すことである意味、憂さ晴らしとしているようで、内輪揉めの域を出ない限り問題はなかった。さっさと人類に外宇宙に行って貰って異星人と戦せろというのが大半の意見だった。
尚、地球上での戦いで戦死した者達は、トランスフォーマーも人類も皆生き返っている。マトリクスの英知だか、エネルゴンのパワーだか良く分からないがとんでもないミラクルだった。
それは始祖が子孫の為、最後の力を振り絞って起こした奇跡だということを知っているものはいない。彼らにとって人類もまた、自分達の子孫のようなものであったのだ。
今日もディエゴ・ガルシア島は賑やかだ。
あちらこちらで爆炎が起こり、轟音が響こうとも。皆、それなりに仲良く、そして楽しくやっている。
強かな財政管理者達がそのうちこの島を観光名所にしてしまう日も近い。なにせ、日々何かが壊れているのだから金がない。各国に要請するにもその理由があまりにも酷い。なにせただの喧嘩なのだから。
彼らの手許にあるメモ用紙には観光地化の他に幾つかのプロジェクトが書かれている。トランスフォーマーと人類の関係をより良くそしてより強固にする為という名目の、まあ要するに金儲けの手段だ。
手始めに乗用車タイプの連中にバンドか何かを組ませてみようか、と彼らは考えていた。
五体いる。人数的にも良い感じだ。格好良いのから可愛いの、ヘタレや悪な感じのまで揃っている。色的にも中々だろう。銀色が三体で、あと黄色と黒なのでユニットとしてたまに分けても良いだろう。
ツインズはデュオで、アーシーはトリオで売り出そう。
彼らのノリは止まるところを知らない。気分はすっかりプロデューサーだ。やけくそとも言う。それだけ彼らに掛かる苦労が大きいだが、お構いなしにまたひとつ、外ではもくもくと煙が上がっている。
テレビで歌って踊るトランスフォーマーが見れる日も近いかもしれない。
FIN